【書評】優しさに満ち溢れた異端な経済書「父が娘に語る経済の話」著ヤニス・バルファキス

2019年5月10日Book

こんにちは。
実はこのブログでほぼ初の書評レビュー記事に悪戦苦闘しているsasaki(@sasaki_holiday)です。

今回皆様に是非お勧めしたい1冊が「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」

この本は2015年のギリシャ経済危機時に財務大臣を務めた「ヤニス・バルファキス」という方の著書です。

EUから財政緊縮を迫られる中で「債務帳消し」を主張して一躍世界で話題になった人物です。

そんな彼が「娘に世界の仕組みを語る」ように書いたという本書は世界中でベストセラーとなり日本でも刊行されました。

そんな同書を大学受験で政治経済を勉強して以降、ほとんど経済学とは無縁だった私が何気なく読んでみたのですが、これが面白い。

経済の専門用語を使わずにまるで娘とリビングで雑談をしている一部分を切り取ったような語りは経済書というよりある種の詩を読んでいるような感覚があります。

世界から貧困や格差がなくならい理由を優しく易しい言葉で語りかける本書の魅力や読んだ感想などを今回は紹介していきます。

世界から貧困や格差がなくならない理由を優しく易しい言葉で語りかける

まず同書は娘からの純粋な問いに父が答えることから始まります。

「パパ、どうして世の中にはこんなに格差があるの?人間ってばかなの?」

※ヤニス・バルファキス. 父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。 (Kindle の位置No.190). ダイヤモンド社. Kindle 版.から引用

誰しもが一度は疑問に思いながらも、自身とは関係のないことと頭の隅に追いやってしまう世界が大昔から抱える問題。

そんな純粋な問いに経済学で登場するような難解な言葉やモデルを使わずにまるで絵本を読み聞かせるかのように父が語っていくのが本書最大の魅力。

そして、なぜ富める者はより富んで、飢えや貧困に苦しむ人間が減らないのかを娘と一緒に考えながら答えへのヒントを与えてくれます。

正直、ある程度経済について知識がある方にとっては「当たり前」と思える内容かもしれません。

しかし、本書の冒頭で書かれているようにこの本を通じて「経済」について自分の意見が言えるようになる手引きが同書の意義であるように感じます。

誰もが経済についてしっかりと意見を言えることこそ、いい社会の必須条件であり、真の民主主義の前提条件だ。

※ヤニス・バルファキス. 父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。 (Kindle の位置No.23-24). ダイヤモンド社. Kindle 版.から引用

貧困や格差の裏に隠されている経済に対する無知やある種の恐れみたいな障壁を取っ払ってみんなが主体的に経済と関わるバイブルであると言っても過言ではないはずです。

経済をSF映画や詩・寓話などでわかりやすく例えられている

同書では、経済の仕組みやあらゆる問題を度々読者に分かりやすい「例え」で表現している。

中でもSF映画「マトリックス」を用いて巨大テクノロジー企業が社会を支配する未来を表現している点などは分かりやすくもとても恐ろしく感じた。

とにかく同書は難しい経済の仕組みなどを例える方法が秀逸に感じる。

時にはSF映画の世界を現実の一部分に当てはめて説明したり、ある場面では友人との体験から経済をの仕組みを語ったり。

確かに、いくら「わかりやすい」と謳ってもベースは経済の話なので難しい話もあります。

しかし、すかさず娘の困った顔を察したように易しい例えでフォローするような構成は読んでいてスッキリします。

一瞬、「うーん。。。よくわからないなぁ」と感じると身近な題材で明快な例えがポンと出てきます。

そういった、「疑問」と「理解」の繰り返しが本書の分かりやすさだと感じました。

理想と現実の葛藤、今後の道しるべ

同書では貧困や格差のない理想の世界と、今現在の理想とはかけ離れた世界の実態が語られています。

そしてすべての問題を解決するような画期的な方法が記されているわけではありません。

当然、そこには理想と現実の葛藤があります。

しかし、著者は葛藤から得られる成長と幸せを訴えています。

世界と衝突し、葛藤を経験することで、人は成長する。

※ヤニス・バルファキス. 父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。 (Kindle の位置No.2322). ダイヤモンド社. Kindle 版. から引用

一見理不尽で救いようのない世界であるけれど、その世界と衝突することが大事だと。

その時初めて「経済が抱える不幸や欺瞞に目を向ける」ことができるのではないだろうか。

ではこれから、そんな不完全な世界の中でどうしていけばいいのか。

それについて著者はこう述べている。

経済のような大切なことを経済学者にまかせておいてはいけないのだ。

※ヤニス・バルファキス.父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。(Kindleの位置No.2364).ダイヤモンド社.Kindle版.から引用

だからこそ、世界で実際に何が起きているのか、見えないところでどんな不幸が起きているのかを考えるヒントを同書は与えてくれます。

「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」を読んでみた感想

というわけで本書を読んでみましたが、本のタイトル通りわかりやすい。

そして原始の時代から、ビットコインの話題までの経済の歴史が壮大に語られています。

そして何といっても随所にあふれる「優しさ」が美しい。

娘を含めたこれからの世代に対する優しさと世界が時折見せる美しさを表現していて、読み終えたときにはまるで詩や小説を読んだような感覚になりました。

同書で著者は経済学は現代の宗教と表現しています。

このイデオロギー、つまり新しい現代の宗教こそ経済学だ。

※ヤニス・バルファキス.父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。(Kindleの位置No.2360).ダイヤモンド社.Kindle版.から引用

というのも、昔は宗教が支配者の権威を裏付けるために使われており、現代では経済学がそれに使われているとのこと。

だからこそ、そんな大事なものを専門家に任せているのはあり得ない話だと。

経済を学者にまかせるのは、中世の人が自分の命運を神学者や教会や異端審問官にまかせていたのと同じだ。つまり、最悪のやり方なのだ。

※ヤニス・バルファキス.父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。(Kindleの位置No.2366-2367).ダイヤモンド社.Kindle版.から引用

自らが経済というものに意思表示をできるようにするためにもこの本を読む価値はあったなと感じました。

ぜひ、経済と聞くだけで「自分には縁のないもの」と拒絶してしまうような方や新社会人、学生の方におすすめの1冊です。

以上、ご精読ありがとうございました。

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