【書評】『サピエンス全史』人間が目指すべき幸福とは?「宗教・お金・帝国」虚構が繁栄のカギとなった

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こんにちは。
今更ながら世界的ベストセラー『サピエンス全史』を読んでみたら、想像とは裏腹にメッチャ読みやすくてビックリしているsasaki(@sasaki_holiday)です。

今回ご紹介する1冊は世界全体で800万部以上のベストセラーとなっているユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』です。

完全に今更感は拭えないですが、やっと読むことが出来ました。

実際読んでみた感想としては、「うーん、そんなに目新しい内容もないなぁ。。。」ってのが本音。

本書は人間を「ホモサピエンス」つまり地球に生息する一種の動物という視点から、いかにして地球を支配して今日に至るかという問いに答えています。

大昔に存在したネアンデルタール人などではなく、なぜホモサピエンスのみが生き残り、さらに地球全体を支配するようになったのか。

そして、人類の生活が劇的に変化した「認知革命」「農業革命」「科学革命」によって他の生物と比べてなぜ、圧倒的な差が生まれたのか。

そんな問いに非常に読みやすく、分かりやすい内容で書かれているのが本書の魅力です。

でね、正直言ってこの手の内容は他の書籍でも多く書かれているし特に新鮮な内容でもないと思うんですよ。

じゃあ、なんでこの『サピエンス全史』がこんなにもベストセラーになったのって言うと、ずばりタイトルにもある通りホモサピエンスという動物の「全史」なんです。

何言ってるんだよって感じですよね(笑)

とてつもなく壮大でまるで宇宙から俯瞰で人類の歴史を見たかのようなダイナミックな視点で人類の今日までの過程を非常に分かりやすく、客観的に捉えた1冊なんです。

これまで、宗教や経済、政治、言語、生物学、etc…など分野ごとにこういった問いに答える本はあっても、ここまで包括的で俯瞰的で偏りのない本ってなかったと思うんですよ。

なんていうか、様々な贔屓がないんですよ。

だから、面白い。

とまぁ、前置きが長くなっちゃいましたが今回は『サピエンス全史』を実際に読み終えて感じたこととか書いていきます。

上下巻だし、本のタイトルもなんか難しそうだしって敬遠しがちだけど普通に中高生でも全然読める内容でホントに読みやすいからまだ読んでない人はおすすめ。

ホモサピエンスにとっての3つのターニングポイント

本書によると、人類が地球を制覇する過程において他の生物を大きく出し抜いたポイントが3つあると言います。

それが、「認知革命」「農業革命」「科学革命」

それぞれが人間に大きな力を与え、繁栄のキーポイントになったとのこと。

逆に言うと、この大きな変化がなければ人間はむしろ地球の中では決して目立つ存在ではなく、まさか地球の覇者になり得ることはなかったでしょう。

ホモ属は食物連鎖の中ほどに位置を占め、ごく最近までそこにしっかりと収まっていた。

ユヴァル・ノア・ハラリ.サピエンス全史上下合本版文明の構造と人類の幸福(Kindleの位置No.280-281).河出書房新社.Kindle版.から引用

では具体的にこれらの変化がどのように人間の繁栄に寄与したのでしょうか。

認知革命-虚構が可能にする協力

まず、人類に訪れた最初で最大のターニングポイントは「認知革命」でした。

すなわち、言語による虚構を共有することで他の種とは比べ物にならない協力が可能になったのです。

著者曰く、

聖書の天地創造の物語や、オーストラリア先住民の「夢の時代(天地創造の時代)」の神話、近代国家の国民主義の神話のような、共通の神話を私たちは紡ぎ出すことができる。そのような神話は、大勢で柔軟に協力するという空前の能力をサピエンスに与える。

ユヴァル・ノア・ハラリ.サピエンス全史上下合本版文明の構造と人類の幸福(Kindleの位置No.529-532).河出書房新社.Kindle版.から引用

つまり、それ以前は家族や多くても数世帯のコミュニティで活動していた人類が「虚構」によって生物学の範疇を超えた協力ができるようになったのです。

著者は貨幣や宗教、政治、国家、芸術などあらゆる人間の活動を虚構だと言います。

信用という虚構の大きな力を手にすることで、人々は一致団結することが出来るようになったのです。

そして、間もなく信用は「貨幣」や「帝国」といった大きな武器を作り出すのです。

とまぁ、とんでもないスキルというか武器を手に入れてしまったことがキッカケとなり、他の多くの生物を出し抜いて地球を支配していくわけです。

ここで感じたことは、今当たり前に思ってる大半のことが非常に脆くて綱渡りなんだなぁってこと。

だって、その存在を信じない人間が増えたら今ある多くのものが無になるわけでしょ。

稀ではあるけど、現に起きてるのが国家や貨幣に対する信用の低下。

正直、いつお金なんて虚構の産物をみんなが信じなくなるかなんてわからないしね。

でも、逆に言えば多くの人がその存在を信じている限りは最大の価値であり続けるわけで。

もっと言っちゃえば、殺人を犯してはいけないとか法律だって虚構なわけじゃないですか。

でも、それが正しいと多くの人が信じて、国家がその信用を得ている限りはそれが正義なわけで。

農業革命-より大きなコミュニティの維持

そして、虚構の共有によってそれまでにはありえない規模での協力が可能となった人類は農業という武器を手に入れることで繁栄の速度を上げていきます。

農業によって食糧を生産することで集団生活が可能になります。

それまでの狩猟採集生活では維持できない規模のコミュニティが農業によって維持できるのです。

しかし、ここで面白いのは本書では農業によって人類は豊かになるどころか惨めな生活を強いられるようになったということ。

農業革命は、安楽に暮らせる新しい時代の到来を告げるにはほど遠く、農耕民は狩猟採集民よりも一般に困難で、満足度の低い生活を余儀なくされた。

ユヴァル・ノア・ハラリ.サピエンス全史上下合本版文明の構造と人類の幸福(Kindleの位置No.1536-1537).河出書房新社.Kindle版.から引用

なぜか。

農業によって、定住、特定の食べ物への依存、土地をめぐる争い、エリート層の登場など挙げるときりがない。

つまり、それまでの狩猟採集生活では多くの食料補給源があり、仮に気候変動などである植物が手に入らなくても、別のものを食べることが出来ました。

一方で農業は農地に縛られた生活となるので定住による、疫病などのリスクに加えて、土地を巡る争いなども起きます。

そして多くの農民は狩猟採集生活より過酷な労働に対して得られる報酬はエリート層に搾取されてわずかになります。

確かに人類全体の食料総生産は増加して、人口も爆発的に増加したが個人の幸福は決して豊かにはならなかったということ。

何という皮肉(笑)

そして、本書の中ではこの種の拡大と個の犠牲という側面を家畜化された動物と合わせて説明しています。

まぁ、結局は種の拡大っていう生物の大義名分的には大成功だったかもしれないけど、果たしてそれが個の幸せにリンクするかというと全くの別物だよねって話。

科学革命-無知を認める知的探求

そして、人類が地球を支配する決定打となった「科学革命」

それまで、人間は自身の無知を認めていなかった。

しかし、自身が無知であることを認めることが知を得る原動力となったのです。

近代科学は、最も重要な疑問に関して集団的無知を公に認めるという点で、無類の知識の伝統だ。

ユヴァル・ノア・ハラリ.サピエンス全史上下合本版文明の構造と人類の幸福(Kindleの位置No.4749-4750).河出書房新社.Kindle版.から引用

そして科学によって得られる力は帝国や国家と強く結びつき、これまで想像もできなかったような大きな力を手に入れることになります。

なぜなら、科学はそれ自体を正当化して資金を調達するために政治や経済、宗教といったイデオロギーを必要とするから。

そして、今日では宇宙や生命といったかつては神が支配すると信じられていた領域にまで手が届き始めている。

科学革命に関してはコチラの記事で紹介した1冊が凄くわかりやすくておすすめですよ。

貨幣・宗教・帝国

本書の中では人類の虚構が生み出した多くの産物の中でもとりわけ「貨幣」「宗教」「帝国」がもたらした力と影響力の大きさが説明されています。

貨幣

貨幣は当初、現存する価値の保存・媒体の役割でしかなかった。

しかし、先にも述べた通り「貨幣」と「信用」が組み合わさることで今、目の前に存在しない無限の価値が生み出されることになった。

そして、信用により増幅された価値が新たなる成長を助長して絶え間なく急激な成長を可能にしてきた。

そして、貨幣は圧倒的な普遍的秩序となった。

たとえばアメリカと政治、軍事、イデオロギー、宗教などの面で対立している国や個人さえ、ドルは受け容れている例を考えれば、その普遍性は認めざるをえない。「貨幣は人類の寛容性の極みでもある」わけだ。

ユヴァル・ノア・ハラリ.サピエンス全史上下合本版文明の構造と人類の幸福(Kindleの位置No.7988-7990).河出書房新社.Kindle版.から引用

宗教

貨幣が価値の創造を推し進めたのに対して「宗教」は超人類的な虚構により、あらゆる脆さを補強します。

人間は家族や少人数によるコミュニティの生物学的限界を突破して数百、数万、数億という規模で協力することを実現して、他の生物とは比べられない繁栄をしました。

しかし、虚構によって生み出された社会構造はあくまで想像上の産物でしかなく、そこには脆さが内在しています。

そんな脆さに超人間的な正当性を与えるものが「宗教」だったのです。

なぜ、法が正しいのか。

なぜ、国王が権力を持っているのか。

なぜ、国のために働き戦うのか。

それらを正当化するのが宗教の役割でした。

すなわち、宣教とは同一の規則や価値観などを広める役割を果たし人類の統一、すなわち帝国の拡大に非常に大きな役目を担っているのです。

帝国

前述した「貨幣」「宗教」が人類に浸透すると自ずと「帝国」が出現し人類の統一を加速させます。

帝国の形成においては必ずしも良い側面ばかりではなかったのは事実だが、一方で文化的多様性、領土の柔軟性という特徴からグローバルに融合することが出来た。

そして、帝国は科学・資本主義と強く結びつくことで歴史をダイナミックに動かす原動力となった。

人類にとっての幸福とはいったい何なのか

ここまでは人類が歩んできた成長と進歩について説明してきましたが、本書はこれからの人類にとっての真の幸福について考察します。

確かに「認知革命」「農業革命」「科学革命」という大きなターニングポイントを経験するたびに人類は生物的に地球上で比類のない成功を収めてきた。

一方で、認知革命によって虚構の上に生まれた社会的秩序や宗教は人類の間にヒエラルキーを生み出され、農業革命によって人々は労働、搾取という憂き目にあいます。

しかし科学革命によって人類が使用できるエネルギーは増加して、多くの不可能を可能にしてきました。

とはいえ、それさえもまた多くの不幸を生み出しているかもしれないが。

結局、本書の中でも最終的な人類の幸福の定義について明確な答えはない。

ただ、虚構の中で形成された幸福という価値観は人々の想像の中でのみ存在するもので、その時代の信仰や政治体系、はたまた経済状況によって大きく左右されるはずだろう。

そして本書では、未来のホモサピエンスが進む未来についてこのような予言を残している。

私たちが真剣に受け止めなければいけないのは、歴史の次の段階には、テクノロジーや組織の変化だけではなく、人間の意識とアイデンティティの根本的な変化も含まれるという考えだ。そして、それらの変化は本当に根源的なものとなりうるので、「人類」という言葉そのものがその妥当性を問われる。

ユヴァル・ノア・ハラリ.サピエンス全史上下合本版文明の構造と人類の幸福(Kindleの位置No.7888-7891).河出書房新社.Kindle版.から引用

つまり、今までは虚構の中でのみ存在していた神などの超人的存在が真の意味で人類の目の前まで来ているとのこと。

そして、その行先に関して人類が関与できることについては以下のように述べて本書を締めくくっています。

唯一私たちに試みられるのは、科学が進もうとしている方向に影響を与えることだ。

ユヴァル・ノア・ハラリ.サピエンス全史上下合本版文明の構造と人類の幸福(Kindleの位置No.7920-7921).河出書房新社.Kindle版.から引用

サピエンス全史まとめ

というわけで今回は、世界的ベストセラー『サピエンス全史』を読んだ感想や個人的な要約をしました。

この本は冒頭にも書いた通り、決して目新しい情報が書いてあるわけでもないのですが、その超俯瞰的かつ偏りのない人類史という面と非常に分かりやすい文章が素晴らしい1冊だと感じました。

人間をあえて「ホモサピエンス」と呼び、生物としての人類が様々な変革を経て、生物学上の存在から歴史上の存在へとなり、そしてこのあと人類というカテゴリさえも超越することを予見して本書は終わります。

これからの時代を生きる人間として間違いなく読んで損はない1冊ですし、中高生でも問題なく読むことができる内容なので、ぜひ未読の方は読んでみることをオススメします。

以上、ご精読ありがとうございました。

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