【書評】『ガール』奥田英朗が描く働く女性のリアルが詰まった1冊!最後にはスカッとする短編集
こんにちは。
基本通勤中の電車が読書タイムなので短編小説が好きなsasaki(@sasaki_holiday)です。
今回ご紹介する1冊は奥田英朗さんの「ガール」という1冊です。
奥田英朗さんといえば、2004年に「空中ブランコ」で直木賞を受賞した人気作家です。
空中ブランコはTVドラマ化やアニメ化もされて話題になりました。
現に私もアニメ版の「空中ブランコ」を観てから奥田英朗さんの作品を読むようになりました。(個人的にはおすすめのアニメです)
そんな奥田英朗さんが描いた短編集「ガール」は全5話が収録されています。
男性作家が書いたとは思えないほどリアルな働く女性の感情や女性同士のやり取りは秀逸です。
私は男性ですが、この本を読んだ奥さんは「めっちゃ共感できる!」と話していました(笑)
また、最後にスカッとするようなオチが読んでいて飽きないオススメの1冊です。
奥田英朗「ガール」を読んだ感想
本作には以下の5作品が収録されています。
- ヒロくん:出世に無関心な夫と管理職の妻のお話
- マンション:独身だけどマンションの購入を考えるOLの話
- ガール:広告代理店の華やかな世界で働く30代女性のお話
- ワーキング・マザー:シングルマザーとして働く女性のお話
- ひと回り:ひと回り以上も年の離れた新卒の男の子への淡い恋心のお話
どの作品もバリバリと働く30代女性が主人公です。
社内での人間関係、男性と同じ土俵で働く女性の苦悩、結婚や出産といった女性特有のイベントの中でリアルな感情ややり取りが描かれています。
で、実際に読んだ感想だけど「女の人は男とは全く違う時間軸で生きてる」ってことを強く感じた。
この本のタイトルの「ガール」。
レディではなくガール。
社内でも中堅の年齢となって、これまでは無条件でちやほやされたガールが頼られ自立したレディに変わっていく瞬間を切り取った作品って感じ。
ある意味男ってそういう変化ってないんですよね(笑)
確かに出世したり家買ってローンを抱えたりとかあるけど、周りからの反応ってせいぜい新卒1年目とそれ以降くらいしか差はない感じ。
けど、女性には女性にしか分からない時間軸がある。
そういった女性同士の駆け引きややり取り、無神経な男性からの言葉、そういったものがメッチャリアルに描かれています。
こんなに女性っていろんなことを考えながら日常を過ごしてるのかぁと驚かされました(笑)
一方で、そんな様々なものと戦っている女性がラストには周囲の人間からの何気ない優しさや理解によってフワッと肩の力が抜けてまた元気になるのを読むと、不思議と自分までスカッとした爽やかな気持ちになります。
なんていうか、最初この本を読み始めたときは「あぁ、女性のどろどろした人間関係をリアルに描写した作品か。。。失敗したなぁ。。。」とか思いながら読んでいました。
しかし、最後まで読んでビックリしたのはそういう嫌な感情にはならないんです。毎回さわやかな結末だから。
なんていうか、ホントの悪者が登場しないんですよ。
だから最後には分かり合えるっていうか。
結局はそれぞれの立場があって何かを妥協したりしながらも必死にみんな頑張っているんです。
そして女性はその妥協を強いられる場面が男性に比べてはるかに大きいっていうか。
そんな働く女性が常に感じているようなモヤモヤがリアルかつ繊細に描かれています。
そして最後には笑える女性の強さ。
そんな凄いポジティブな作品です。
奥田英朗「ガール」まとめ
というわけで今回は、奥田英朗さんの「ガール」を読んだ感想でした。
なんていうか、最初は完全に読む本間違えたって思いましたが読み終えたときは何とも言えない爽やかな気持ちになっていてびっくりしました。
それぞれ、悩みを抱えながらも最後には前向きになれるお話が詰まっていて、働く女性だけでなくて男性にもおすすめの1冊です。
実際、私自身もこの作品を読んで女性の方がこんなに色んなことを考えながら日々働いているのかと強く感じました。
ホントにどの作品も一切嫌な気持ちにならない爽やかな1冊でした。
以上、ご精読ありがとうございました。